ビジネス小説  |

百田尚樹さんの海賊とよばれた男

この物語は、出光興産の創業者である出光佐三という人物をモデルに書かれた歴史経済書であり、道徳や原理・原則が曖昧な今の社会に、一筋の道しるべとなるような兆しをもたらす、今日のビジネスシーンにおいても最も参考にすべき一冊であると私は考えます。

出光佐三という人物は、一言で言うとアウトサイダーであり、常套手段とはかけ離れた戦略で次々とマーケットを拡大して行くといった、いわば豪腕経営な一面もありました。

しかし、最も特筆すべき点は、大家族主義に則り会社を経営し、社員を本当の家族同様に扱い、最強のビジネス集団に育て上げたという教育者としての一面では無いでしょうか。

会社を興した若い時から、大地域小売業を実践目標としてきた出光は、マーケットの拡大を行う為には、その店舗ごとにしっかりと経営を任せられる人材が必要と考え、我が家を社員寮の様な施設にして、就業後に彼らの元へ行き徹底的に経営のイロハを教え込むなどして、社員教育に力を注いだ。

その後出光の狙い通り、若き日に出光自身から直接教育を受けた社員達はそれぞれの地で活躍し、その土地土地に出光の名を知らしめて行ったのです。

また、大家族主義の大きな特徴として、会社にはタイムカードも無ければ出勤表なども無く、馘首(クビ)も無いといった、大胆な規則もありました。

戦後の焼け野原の中仕事なんてまったくない状態で、国内のみならず、国外に徴兵で残された社員達全員の給料を払い続けたという話は、あまりにも有名なエピソードとなっている。

これら全てのエピソードは、出光が生涯抱き続けた言葉、士魂商才、この言葉一つで語れるのではないだろうか。

武士の魂をもって、商才を発揮せよ。

道理をもって商売をしなさい、という事である。

一言でいう程簡単な事ではないが、歴史に名を残すような大きな事業を行う気持ちがある人は、少なからずこの精神を持って会社経営に励むべきだと考えさせられる一冊となっている。


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